山本直樹公開講座@名古屋造形大学 2018,6,7
2018年6月7日、山本直樹公開講座@名古屋造形大学のレポートです。
聞き手は舞草つよし氏。『レッド』立ち上げ編集者で、現在名古屋造形大で教えている方だそうです。「マンガとエロス」との演題がついておりますが、時間にして半分以上が質疑応答でした。そんな中で山本氏が最初に掲げたのがこれ
①「フィクションと現実の問題」
フィクション=ことば・言語→創作、マンガ、小説、演劇、ゲーム、イデオロギー、宗教、スポーツ
グレイゾーン→ノンフィクション、プロレス、芸人
現実→ふつーにくらす そしていつか死ぬ
スポーツもフィクション。勝ち負けもフィクション。現実で負けたから殺されるわけではない。
笛が鳴ったあと突っ込んでいくのはフィクションではなく暴力(日大問題)
グレイゾーンの芸人のエピソードトーク。見てて危なそうな綱渡り。
ふつーにくらすことは「ふつーのくらし」ではない。どこかに「ふつーのくらし」というものがあるわけではない。
フィクションと現実の混同の例がすごくいっぱいある。日大アメフト、エロマンガの規制問題、連合赤軍。「ふつーにくらして死ぬ」より大事なものがある、のは混同であり原理主義。ふつーにくらすよりことばの方が大事になっちゃう→究極のものは戦争
②質疑応答より、印象深かった話
⚪マンガという作業はめんどくさいから得意技でいかないとつらい。あの偉大な井上雄彦先生だってバスケットと剣道しか描いてないじゃないか
⚪これから先webマンガも原稿料が上がると思う。経費がかからないでやれることはないか、とつくってきたものだから今は安いけど、コストがかからないものなので。新人でも8000円以上出せるんじゃないか(舞草氏)
⚪レッドは結局クレームは来なかった。遺族の方からのを一番おそれていたけれど来なかった。クレームって来ないものなのか、と思った
⚪当事者から話を聞くととても面白い。戦争から帰って来たおじいちゃん、みたいな
⚪アマゾンにくたらしいからあまり買いたくないけど買っちゃうんだよねー
⚪自分を切り取るマンガ描いても元気なのは女性。西原さんとか伊藤理沙とかすごい。男はダメになっちゃう。福満しげゆきとか(→この話を聞いてうちの旦那は「よく読んでるなあ」と言った)
⚪レッドの受賞パーティーをフーターズでやった時に乳児を抱えていた伊藤理沙が「おっぱいのほんとうの使い方を見せてやる!!」と言いながら授乳していた
⚪(描かないようにしているこだわりは?という質問に対して考えて)政治的なものは描かないようにしている。(ここで山本夜羽音と違って!とつけ加えたのが面白かった)それを持ち込んで面白くなるなら描くけどそういうものが思い付かない。面白いものしか描きたくない
⚪うまい話をうまく読まされても「ああ、うまいねー」で終わってしまう。小さくてもいい、新しいものが読みたい。ワケわかんないものが好き。
⚪あらゆる本、マンガ、映画、友達。いろんなものを見なさい。影響を受けるのを恐れちゃダメですよ。いろんなものを吸収した上でたまに出て来るのがオリジナリティというものだと僕は思います
⚪マンガ家になることへの葛藤はなかった。昔レオナルド熊がテレビで「⚪⚪になるにはどうしたらいいですか?」と問われ「ほかの道あきらめちゃえばいいんだよ!」と言ってた。当時20歳くらいだからあっそっかー、って思っちゃった。そういう意味でもいろいろ読みましょう。そういうことばをいろいろ集めてたんじゃないかな、フィクション、嘘っぱちを
③個人的にうれしかった話
⚪大田区産業会館というパワーワードが出てきた。氏が大学生当時コミケはここでやっていた。私はオンリーとかで中学の頃よく行ったよ
⚪『演歌なあいつは夜毎不条理な夢を見る』の話が出て来た。レッドを連ドラ化しよう!と嘯く大塚恭司氏が92年に手掛けたテレビドラマ。私にとっては好きなバンドのメンバー(METROFARCEの伊藤ヨタロウ)が出ていたので、視聴はできなかったけど、思い出に残ってるタイトルである。山本氏の『君といつまでも』や、氏の好きな大人計画の音楽をけっこうヨタロウ氏が担当しているので、繋がってるんだろうなあ、と思うと嬉しい。
以上です。
山本直樹を読むようになったのはまんま旦那の影響だと思う。旦那は市井のマンガ評論家を標榜し、氏の『のんきな姉さん』を題材にしてガロのマンガ評論新人賞で入選したことがあるのです。(ここ本人のリクエストにより書いております)
山本作品には冷徹な現実への視線、というものが通底してあると感じていましたが、氏自身が「フィクションに相対する現実」を非常に意識しているということがわかり、なんか納得したのでした。
サインいただいたよ!(旦那のリクエストでね!)
このタイトルの作品もあったよね